「長期間相続登記がされていないことの通知」を受け取られた方へ

 突然法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」が届き、驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 これは平成30年に制定された、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法 第40条」の規定にもとづき、長期間にわたり相続登記等がされていない登記未了の土地について調査した結果、判明した法定相続人の任意の1名に対して、各法務局から相続登記の申請を促すために発送されたものです。

長期相続登記等未了土地とは

 日本では、所有者不明となっている土地が多く、全国の所有者不明土地を全て合わせると、九州の面積を超えるといわれています。

 なぜこのような土地が多くあるかというと、所有者が亡くなって相続が発生したにもかかわらず、相続人がその名義を新しい所有者に書き換える登記を行わなかったためです。

 

 現在の法律では、相続登記の申請は任意とされており、相続税申告のように期限が定められていないため、相続登記を放置していてもペナルティーはありません。そのため、費用を抑えるために相続登記をしないままでいたり、相続した土地の価値が乏しく、売却も困難であるような場合には、費用や手間を掛けてまで登記の申請をする意欲がわきにくいことも理由にあるようです。

 また相続登記をしようとしたけれど、放置している間に新たな相続が起こって法定相続人が増えたり、相続人の判断能力が低下し遺産分割協議が出来ない場合の手続きの煩雑さに登記を諦めるということがあります。

 

 しかしこのような所有者不明土地があると、不法投棄などの環境悪化やまちづくりのための公共事業が進まないなどの問題があり、災害からの復興に際しても大きな問題となっているため、早急な対応が求められてきました。

 

 そこでこの問題を解決するため、平成30年に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が制定され、その一環として、相続登記等が30年以上されていない土地について、法務局から相続人に対し上記の通知がされることになりました。

相続登記はした方がよいのか

 「長期間相続登記等がされていないことの通知」を受けたからといって相続登記を必ずしないといけないというわけではなく、そのまま放置していたとしても罰金等のペナルティーはありません
 しかし、義務ではないものの、登記できるときにしておかないと手続きがさらに複雑になり、問題を子や孫の代まで先送りすることになりかねません。

通知を受けたこの機会に、できる限り早めに手続をされることをおすすめします

 

 なお、通知書が届いている時点で法務局は相続関係を把握しており、その内容を記載した「法定相続人情報」という証明書を発行してもらうことができます。この証明書があることで戸籍謄本等の取得が一部不要になるなど、比較的相続登記が進めやすくなっています

 

 また令和6年4月1日からは相続登記の申請が義務化されることになります。相続(遺言も含む)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。

法務局から通知が届いたらどうすればよいか

 通知書を受け取られた方は、その通知書に書かれている法務局に行き、現状を把握する必要があります。
 法務局では、どの土地が誰の名義になっているのか、その名義人とあなたの関係(孫や曽孫、甥や姪、あるいはその子孫の場合もあります)や、他の相続人は誰なのか、といった情報を確認することができます。

 現状を把握したら、相続登記手続を進めていくことになります。

 通常の相続登記では、戸籍調査を行い、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍や相続人の戸籍などの添付書類を用意する必要がありますが、この通知書が届いている場合は、改めて戸籍の調査をする必要がなく、この機会に相続登記をすることは相続人にとってもメリットがあるといえます。

 

 いきなり法務局に行って何をすればよいのかわからなくて不安な場合、お一人で悩まずに、登記の専門家である司法書士にぜひご相談ください。

 

 当事務所では、この長期相続登記等未了土地解消作業の相続人調査に携わっておりますので、より円滑に対応することができます。

 

 権利関係が複雑な相続登記手続きも受任・解決しておりますので、通知を受け取られた方は一度ご相談ください。

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